ロマンスに心酔
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⋯⋯また、だ。
聞こえる。
青葉 紗奈、社会人3年目、24歳。
ここ最近、ストーカーに悩まされています。
実家から電車で40分ほどの中小企業に就職。
社会人になって2年が経ち、そろそろ仕事にも慣れてきたということで、この春からようやく始めたひとり暮らし。
会社の最寄り駅から2駅、駅から徒歩10分。
1DKの小さなアパートの4階。
お値段以上の家具屋さん、憧れのフランフランなど、運転要員のお父さんを連れ回して完成させたお気に入りのお部屋。
夏の匂いがし始めてきた5月。
だんだんと新しい生活にも慣れてきて、少しだけ残業した日の19時過ぎ。
いつものようにるんるん気分で駅からの帰り道をたどっているとき、ふと、後ろの足音が気になった。
「(⋯⋯たまたま、帰り道が同じだけ、だよね、うん)」
しかし、次の日もその次の日も、変わらない足音が後ろから聞こえる。