ロマンスに心酔



「大学生のときは何もなかったの?」


「あ、はい、まったく」


貧血事件から気にかけてはくださっていたけれど、特別なものは何もなかった。


「ふうん?じゃあ会社同じだったのもたまたま?」


「偶然です、すっごいびっくりしました」


「へー、すごいね、縁だね〜」


「ありがたいです」


「⋯⋯なんか、どこがすきなの?とか聞きたいけど、前ちゃんのそういう話聞いたことなさすぎてむずむずするわ」


「あはは、たしかに、同期のそういう話って聞きにくいですよね」


わたしも、変な先入観が入ってしまわないように、自分の同期のそういう話はあまり聞かないようにしている。


「ま、スペックは申し分ないし、面倒見いいし、いい彼氏にはなりそう」


「あはは」


⋯⋯嘘なんですけどね⋯⋯。

勝手に彼女面してる気分になり、複雑だ。


と、ついに定食が到着した。

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