ロマンスに心酔
「まあ、今から確かめてみなきゃ確実なことはわからんけど」
今まで、恐ろしくて考えようともしなかったストーカーの正体。
たしかに、社内の人間なら、毎日のばらばらな退勤時間もわかるし、合わせることもできる。
でも、駅で待っていればいつか帰ってくる、ということを考えれば、社内ではない可能性もじゅうぶんあり得る。
しかし、せんぱいはどこか確信している。
「結構、目星ついてるかんじ、ですか⋯⋯?」
「んー、まあ。今朝、怪しいなーと思ったくらいだけど」
今朝。
そんな素振り一切なかったし、わたしはその怪しささえ気づいていない。
「ええ、ぜんぜん気づかなかったです⋯⋯」
「だろうなーと思ってた」
「あの、ほんと、ありがとうございます⋯⋯」
こうやってせんぱいが助けてくれていなかったら、確実に危ない目に遭っていただろう。
駅を目指して歩きながら、改めて感謝をした。