ロマンスに心酔
駅のホームで少し待ち、帰宅ラッシュの電車に乗り込む。
せんぱいは、ときどき、警戒するように周りを観察している。
すぐにわたしの最寄り駅に到着し、改札を抜けて家に向かって歩く。
その間も、せんぱいは、怪しまれない程度に周りの様子を伺っていた。
「⋯⋯足音聞こえる?」
「いや、聞こえない、です⋯⋯」
「よな」
「や、やっぱり勘違いだったんですかね⋯⋯?」
だとしたら本当に申し訳ない。
「いや、そんなことはない。きょうはおれがいるからだと思うよ」
並んで歩きながら小声で会話する。
「犯人、わかったんですか⋯⋯?」
「んー、80%くらい?」
「すごい⋯⋯」
「きょうは戦えないし、あしたからもしばらくは一緒に帰ろう。相手がどう出るか様子見る」
「わ、かり、ました⋯⋯」