ロマンスに心酔
「いつも朝の電車何時?」
「ええと、8時40分に会社の駅に着きます」
「了解。同じ電車乗るから、朝も一緒に行こ」
「いいんですか⋯⋯?すみません、ご迷惑ばかり⋯⋯」
「おれが心配なだけだから」
わたしはてっきり、きょうストーカーを撃退して、ニセ彼氏のせんぱいは1日限りだと思っていたけれど。
せんぱいはもしかして、長期戦になることも予想してたのだろうか。
だから、わたしと行動を共にしてても不思議じゃないように、会社でも言ったのかもしれない。
「しばらく下で待ってるから、家に変わったこと起きてないか見てきな」
「あ、ありがとうございます⋯⋯」
きょうは何事もなく家に到着でき、きのう家を空けた心配も汲んでくれたせんぱいは、そう声をかけてくれた。
「どうだったかライン入れて。もし部屋にいたくないようなことが起きてたら降りてきなね」
「わ、かりました」
「ん、じゃあ」
「はい、ありがとうございました!」
この状況でせんぱいが下で待ってくれているというのは、すごく心強い。
アパートの入口で別れ、オートロックを解除し部屋へと急いだ。