ロマンスに心酔
「いや、撃退するまで安心できない」
「せんぱいがそばにいるだけで撃退できてるんじゃ⋯⋯?」
「まだ油断できない」
「そ、そうですか⋯⋯?でも、電車通勤、負担じゃないですか」
「ぜんぜん大丈夫」
せんぱいが頑ななので、おとなしく引き下がる。
わたしとしては、もちろんありがたい限りだ。
「じゃ、またあした」
「ありがとうございました。おやすみなさい」
「おやすみ」
いつものようにアパートの下でお別れし、ぺこりと頭を下げた。
「(ついに仕掛けてきたな⋯⋯)」
───のんきなわたしは、せんぱいが着々と撃退に向けて準備を進めていることなんて、知るよしもない。