ロマンスに心酔



「⋯⋯何してるんですか?」


「⋯⋯!」


「ま、前橋くん!?」


田中さんも驚いたのか、身体をびくりと揺らしガタガタと立ち上がる。


「い、今は面談の時間だぞ!?」


「14時までですよね?14時15分から我々の会議があるので、準備に参ったのですが、⋯⋯何されてました?」


「あれ、もうそんな時間か⋯⋯?
何してたって、だから面談だよ、面談」


「業務とは関係のないお話をされてましたよね」


「なっ、証拠は!?どこにあるんだ!」


「ああ、そういえば、午前中の会議で使った録音機、忘れていったんだよなあ、スイッチ入れっぱなしだ」


そんなことを言いながら、せんぱいが死角にある机に向かい、小さな機会を手に取る。


「録音機⋯⋯?」


「スイッチ切り忘れてたので、面談の内容まで録音されてしまいましたね」


「な、なに⋯⋯!?」


「すみません。でも定期面談だし、持ち出さない限りは支障ないですよね?」


⋯⋯策士だ。

というか、せんぱいはぜんぶ気づいていたのだろう。

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