ロマンスに心酔
どこかのタイミングで、ストーカーの正体が田中さんだと気づいた。
わたしの定期面談を田中さんが担当することを知った。
あえてその前後の時間帯に会議室を抑え、決定的な証拠を掴むため、わざと録音機を置いた。
⋯⋯完璧だ。
ストーカーをしているという決定的な言質は取れなかったかもしれないが、怪しさはじゅうぶんにあるだろう。
「これを上に出せば、あなた仕事なくなりますよ」
「⋯⋯っ、くそ⋯⋯」
せんぱいの顔が、これまでに見たことないくらい怖い。
田中さんはもう顔面蒼白だ。
「ひとつ聞きますが、あなた、青葉のこと付きまとってますよね?」
「いや、ちがう、あれは⋯⋯!」
「⋯⋯」
「あれは、ただ、待ち合わせを⋯⋯」
「⋯⋯まだ逃げるんですね」
「⋯⋯」
こっちはじゅうぶん証拠もってますよ、と言わんばかりの言葉だ。
田中さんもさすがに諦めたのか、もう言い返さなかった。