ロマンスに心酔



「なんだあ⋯⋯」


ほっとして思わず笑みが零れる。

それを見たせんぱいも、ふっと息を吐いた。


「おつかれ、頑張ったな。目もちょっと赤いし、少し休んでから戻りな」


「はい、あの、本当にありがとうございました」


「ううん、青葉が無事でよかった」


また頭をぽんと撫でられる。

きゅんと鳴った胸の音は、見ないふりをする。


「きょうもまた、エントランスで待ってる」


「え、でも、撃退できましたよ⋯⋯?」


「本当にもうしないか確認」


「⋯⋯いいんですか?」


「ん。じゃ、また後で」


「⋯⋯はい⋯⋯」


せんぱいの会議の時間も迫っていたので、最後にそんな約束を交わしてから、一礼して会議室を出た。



思っていた撃退方法とはちがったが、ついに、帰り道に平穏が戻ってくるだろう。

せんぱいと行き帰りを共にする理由がなくなってしまったのが、少しさびしい、なんて。


もう沼に片足突っ込んでしまっているじゃないか。

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