ロマンスに心酔
───“そろそろ上がれそう。どう?”
“わたしも上がれます!エントランスで待ってますね”
───“了解”
⋯⋯いよいよだ。
何事もなく定時で業務は終わり、メイク直しも入念にできた。
「お先です。おつかれさまでした」
「おつかれさま〜」
パソコンの電源を切り、エレベーターに向かう。
心臓の音がうるさい。
エントランスでも落ち着かずそわそわしていると、せんぱいが降りてきた。
「お待たせ。おつかれ」
「おつかれさまです⋯⋯!」
「行こ」
この光景ももう日常になったのか、視線を感じることもほぼなくなった。
そのことが少しうれしい。
「(せんぱいに、見合う人に、なりたいなあ⋯⋯)」
“気にかけている後輩”から脱出する方法は、何かあるのだろうか。