ロマンスに心酔
せんぱいに連れられ、わたしの最寄り駅まで向かった。
田中さんも美味しいお店があると言っていたし、飲食店が豊富なのだろう。
わたしの家とは逆方向に進むと、大衆向けの、でも小汚くはない焼き鳥屋が現れた。
「わあ!おいしそう!いい匂いしますね」
「開発部の行きつけ。こんなとこでよかった?」
「当たり前です!高級レストランとかのほうが困っちゃいます」
「ふ、そうなんだ」
せんぱいが入口のドアを開けると、炭火の香ばしい匂いと華金独特の雰囲気が漂ってきた。
そこそこ盛況しており、ちょうど空いていたカウンターに並んで座る。
「(香水つけ直しててよかった⋯⋯)」
思ったよりも近い距離に、少しどぎまぎしてしまう。
「そういえば、一緒に酒飲むの初めてだな」
「たしかに!わたしまだ未成年でしたもんね」
「うわー、なんか、感慨深い。大人になったな」
「なりましたねえ」