ロマンスに心酔
「わ〜!なつかしいです、うれしい!」
「ふ。そんな喜ぶ?」
「うれしいですよう!」
「じゃ、プライベートは“さなちん”って呼ぶわ」
「やったあ!えへへ」
せんぱいの声で呼ばれる“さなちん”から得られる栄養がある。
それは、同時に毒にもなるのだろうが、いまは、見ないふり。
たくさん食べてたくさん飲んで、そろそろ帰ろうか、という空気になる。
お手洗いでリップを塗り直してから席に戻ると、もうすでにお会計が終わっていた。
「えええ!お礼なのに!わたしが払います!」
「いや、いい。楽しかったし、いろんな話できたのでじゅうぶん」
「⋯⋯じゃあ、アイスとか、食べませんか!」
「よし、コンビニ行こ」
「ありがとうございます、ごちそうさまです」
「ありがとうございました〜、またお願いしま〜す!」
相変わらず元気のいい店員さんの声に見送られながら、焼き鳥屋を出た。