ロマンスに心酔





「(あれ、そういえば、彼氏(仮)は、もう終わったんだよね⋯⋯?)」


せんぱいから何も言及がないことを、ふと思い出した。


せんぱい飲みに行った次の週から、わたしはひとりでの通勤に戻り、せんぱいも車で出社していた。

さびしいなあ、と感じるが、せんぱいのことをよく考える日にはせんぱいから依頼のメールが入っているので、それで何とか相殺している。


ここ最近ずっとふたりで通勤していたからか、別々での出社はやはり違和感があるらしい。

木曜日の昼休み、ついに河野さんから尋ねられた。


「ねえ、青葉さん。前ちゃんのことって、まだあまり訊かない方がいいのかな⋯⋯?」


⋯⋯すごい気を遣われている。


「あ!いえ、あの、ぜんぜん、仲違いしたとかではない、です⋯⋯」


「ほんとに!?よかったあ〜!一安心だ」


「すみません、いらぬご心配をかけてしまいました⋯⋯」


「ううん。でも、何かあったの?」


もう時効だろうし、河野さんだし、話しても何も支障はないだろう。

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