ロマンスに心酔
「はい。飲めそう?」
「あ、ありがとうございます、すみません⋯⋯」
ソファに横になっていた身体を起こし、近くの自動販売機で買ってきてくれた水をありがたく頂戴する。
「んーん。昔と同じようなかんじ?」
「そ、ですね⋯⋯」
前橋 慧せんぱい。
企画部のエースで、同じ大学のせんぱいだったひと。
バドミントンサークルのせんぱいで、当時はとても良くしてもらった。
「さなちん、ラリーしよ」
「はい!」
あの頃のわたしは、みんなに“さなちん”と呼ばれていて、それはせんぱいも同じだった。
サークルによく参加していたわたしのことを、就活が終わったせんぱいは気にかけてくださっていて、行く日が合えばラリーに誘ってくれていた。
ただ、せんぱいの就職先はまったく知らず、会社での再会は本当に偶然。
あの頃と変わらないきらきらしたかっこよさで、若くして企画部のエースに名乗りを上げている超エリートだと知ったときは、せんぱいらしい活躍だなあとしみじみ思った。
そしてせんぱいは、大学時代にもわたしの貧血に遭遇したことがある。