ロマンスに心酔



「青葉さん、体調悪いでしょ」


河野さんには気づかれるだろうなと思っていたけれど、朝イチでばれた。


「う⋯⋯ばれますよね⋯⋯」


「あと何が残ってんの?」


どうやら帰らせてくれようとしているらしい。


「あ、あの、いいです、申し訳ないし⋯⋯」


「だめ。いまの時代、体調崩してんのに仕事してたら怒られるよ?いいから、残り全部渡して」


「うー⋯⋯」


「わかったわかった、また元気になったときに私の仕事任せるから」


いやいやと首を振るわたしに、河野さんがあやすように語りかける。


「ね、頑張れるときに頑張ってくれたらそれでいいから。いまは身体が休ませてくれって言ってるんだから、無理しなくていいの」


「⋯⋯っ、すみませえん⋯⋯」


「いいから、泣かないの!大丈夫だから」


しんどい身体、無力な自分への絶望、そこに河野さんのやさしさが染み渡り、思わず涙があふれる。

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