ロマンスに心酔



「あの、いま途中のやつは、さいごまでやりきりたい、です」


「⋯⋯わかった。それ以外はもらってく。最後のひと踏ん張り、よろしく」


「はい、ありがとう、ございます」


結局迷惑をかけてしまった。

せんぱいとの“無理せず”という約束を守らなかったから。

落ち込みながら、いま進めている資料作成に取り組む。


11時過ぎ。何とか終えられそう、と終わりが見えると、一気に身体が重く感じる。

最後の力を振り絞って作り切り、共有フォルダに保存して、ぐっと伸びをした。


「(あー⋯⋯やばいなあ)」


終わったという安堵からか、頭が朦朧としてくる。

有給の手続きをし、パソコンの電源を落とす。


「青葉さん、おつかれさま。前ちゃんに連絡したから、昼休憩はやめに取って車で送ってもらえると思う」


「あ、ええ⋯⋯すみません、ありがとうございます⋯⋯あの、しごとも、ご迷惑をおかけして⋯⋯」


「ぜんぜん。はやく元気になって、ばりばり働いてね」


「ありがとう、ございます」


「うん、気をつけて」


河野さんに見送られ、他の同僚の方々からも暖かい言葉を頂きながら、ゆっくりとエレベーターに向かった。


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