ロマンスに心酔





───“河野から聞いた。送るから終わったら連絡して”

“終わりました。すみません”

───“了解”


「(はああ、やってしまった⋯⋯)」


何でこう、学習しないのか。

自分の限界が他のひとより低いこと、きちんと生活しないとすぐ身体に出ることも、わかっているのに。


「(せんぱいみたいに、なりたいのに⋯⋯)」


追いつきたくて頑張ってるのに、迷惑をかけて、どんどん追いつけなくなる。


「(せんぱい、おこってるかなあ、おこってるだろうなあ⋯⋯)」


そりゃあそうだ。

身体が弱くて、無理をするなと約束した後輩が、無理をして案の定身体を壊し、業務の合間に家まで送り届けなければならないのだから。


エントランスのソファに腰掛けて、目をつぶる。


「(さむいなあ⋯⋯)」


もし電車で帰ることになってたら、家までもっただろうか。

途中の道端でぶっ倒れていた可能性もある。

河野さんもそれをわかっていて、せんぱいに連絡したのだろう。

迷惑をかけてごめんなさいという気持ちと、ありがとうございますという気持ちがごちゃ混ぜになっている。

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