妹の彼が好きな人はおデブのお姉さんだった ~本当の事を伝えたくて~

 暫く部屋の掃除などをしながら考え込んでいた愛良。

 ピピッ。
 スマホが鳴った。

「はい…」
(末森さん。お休みの所申し訳ございません)
「所長、どうされたのですか? 」
(はい。退院したら、ご飯に付き合って下さいってお願いしていましたよね? )
「そうでしたね」
(今夜は時間ありませんか? )
「今夜ですか? 」
(はい。来週から少し忙しくなるので、時間があれば夕飯一緒にと思ったのですが。ご都合悪いですか? )

 愛良は壁のカレンダーを見た。
 来週からもう梅雨の時期に入る。そっか…季節の境目、梅雨の時期は雨が多くなるし…それに…。
「いいですよ。今夜なら、空いています」
(本当ですか? 良かった。それじゃあ、迎えに行ってもいいでしょうか? )
「え? 」
(待ち合わせは危険だと思うのです。迎えに行った方が、安全だと思うので)
「…私の家、ご存知ですか? 」
(はい。引っ越しされていなければ、愛香さんが住んでいたマンションにいらっしゃいますよね? )

 ああ、そうか。愛香の家を知っているからわかるのか。

「分かりました。それではお願いします」
(じゃあ、18時に迎えに行きます。よろしくお願いします)
「わかりました」

 これはデート? 
 電話を切った後に愛良は急にドキドキしてきた。デートなんて、したことがないに等しい。どんな服を着てゆけばいいのだろうか?

 ドキドキする鼓動の中、愛良はクローゼットの中を確認した。

 どの服もラフでおしゃれするような服はないに等しい。普段着でいいだろうか?

 そう思いながクローゼットを見ていると、まだ開けられていない箱が目に付いた。
「これは…愛香が誕生日プレゼントにくれた服だったかな。痩せれば着る事ができるって言っていたけど…」
 
 箱を開けて見た愛良。
 
 箱の中には清楚なブルーのワンピースは入っていた。ゆったりとしたデザインで、襟元が白いレースになっている。

 クローゼットの鏡の前でワンピースを当ててみた愛良。

 太っている愛良にもピッタリで似合っているデザインだった。
 着れないかもしれないけど…そう思いながらワンピースを着てみた愛良。

「あれ? …ちょうどいい…」
 太っている愛良にピッタリのサイズでゆったりとしていた。
「今夜はこれを着てゆこう」

 嬉しくなった愛良はワンピースを着てメイクを始めた。
 いつも真剣にメイクをしていない愛良だが今日はちょっと気合を入れてメイクをしてみた。そして髪もいつもはラフに後ろで結っているだけだが、今日はきちんとまとめてアップにしてみた。ちょっとだけ前髪を巻いてみて。
 特別に変わったわけではないが何となくドキドキしながら準備をすることが楽しいと愛良は感じた。

 

 18時になり幸太が迎えに来て愛良はマンションの下へ降りて行った。

 病院に送って行ってくれた時と同じ車でやって来た幸太。
 今日の幸太はラフなブルーのシャツにジーンズ姿に白いスニーカー。普段はかっちりしたスーツを着ているが、ラフな格好の幸太はとても若々しく見える。

 車から降りてきた幸太を見ると、普段と違う若々しい姿に愛良はちょっと恥ずかしくなり視線を反らした。

 歩み寄ってくる幸太の足音にドキドキと鼓動が高鳴る…。
「こんばんは。お待たせして、すみません」
「い、いいえ…」

 幸太は愛良に少し見惚れていた。

 このワンピース…俺が好きな色って彼女と話していたけど…もしかして伝わっていたのかな?

 あまりにもじっと見つめられ愛良は恥ずかしくなった。
「あの…ごめんなさい。私、男性と一緒に食事に行くことなんてめったになくて。何を着たらいいのか分からなくて…」
「い、いいえ。ごめんなさい…見惚れていただけです」
「え? 」
「ワンピースの色、俺が好きな色だから。それに、とっても綺麗で…」
「な、何を言い出すのですか? 」
「とりあえず車に乗って下さい」

 そっと愛良の手を取って幸太は車へ連れて行った。

 後部座席に乗り込もうとした愛良だが、幸太が隣に乗ってほしいと言った事で助手席に乗る事に。

 誰かに見られたら恥ずかしいと思う。
 そう思って愛良はずっと俯いていた。

 
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