妹の彼が好きな人はおデブのお姉さんだった ~本当の事を伝えたくて~
「幸太さん、今から一緒に教会へ行きましょう。美和と幸太さんの結婚式をやるの。そうしたら、もう永遠に美和と幸太さんを引き裂く人は現れないわ。美和と幸太さんは、運命で繋がっているのよ」
すっかり自分の世界に浸っている美和。
そんな美和に幸太は呆れたようにため息をついた。
「申し訳ないけど、あなたと一緒に行くことはできません」
「どうして? 」
「どうしてって、あなたはご自分の立場を考えた方がいいです。現在指名手配中の身ですよ。そんな人と結婚だなんて、ありえません」
信じられない…と、美和は茫然とした目を浮かべて幸太を見つめた。
「幸太さんもう忘れたの? あなたが私の事を助けてくれた日の事。あの日から、私と幸太さんは、運命で繋がっているの。歩道橋から落ちて動けない私を、誰もが見て見ぬふりをして通り過ぎる中。幸太さんは私に声をかけてくれた。動けない私を助けてくれたでしょう? あの日から、私と幸太さんは強い絆で結ばれているのよ。誰も邪魔できないわ」
熱い目をして語る美和だが、幸太は何を言っているのか分からない顔をしていた。
「あの歩道橋から私と幸太さんの運命は始まった。なんども幸太さんを見て声をかけようとしたけど、その度にストーカーに邪魔されてしまって。やっと声をかけられると思ったとき、幸太さんを見て嬉しくて抱き着こうとしたのに隣の女が邪魔をして…。あの時は大変だったわね、あの女のせいで幸太さん事故に遭って暫く目が見えなくなっていたのでしょう? 」
ん? あの事故の事を言っているのか? あの付近をうろついていたとは聞いていたが、抱き着こうとした?
「…抱き着こうとしたって、俺にか? 」
「ええ、そうよ。幸太さんの後ろからギュッとねっ」
そうか…あの事故の時、誰かに押されたと思っていたが。あれは、この女が後ろから抱き着こうとしたって事か。その弾みで俺は道路に突き出されて事故に遭って視力を失った。
この女が後ろから抱き着こうとしなければ俺は事故に遭う事はなかったって事か。
なるほど…
「ねぇ、幸太さん。あの時邪魔した女は、美和がちゃんと始末したのよ。私が突き落されたあの歩道橋から、同じように突き落として二度と幸太さんに近づけないようにしたの。でも…その後も、幸太さんには沢山のストーカーがつきまとっていたから。み~んな美和が始末したのよ。だから安心して、もう幸太さんに付きまとうストーカーは誰もいないわ」
こいつ…俺の傍に来る女性はみんなストーカーだと思っているのか?