妹の彼が好きな人はおデブのお姉さんだった ~本当の事を伝えたくて~
「悪が俺は行かない」
「え? どうして? 」
「行く必要はない。…俺に言わせれば、アンタの方がストーカーだ」
「えっ…? 美和がストーカー? どうして? 」
幸太は小さくため息をついた。
「ストーカとは、恋愛感情を持って着きまとう人の事を言う。その行為は迷惑行為。相手は何とも思っていない、恋愛感情も持っていないのに。一方的に好意を抱いて勝手な行動をして過激ともいえる行動を仕掛けてくる」
「ええ、そうよ。だから、幸太さんに着きまとっていたストーカー女は美和が退治したのよ」
「アンタが言っている人達は、俺のストーカーではない。ただの友達だったり同僚だっただけだ。何を思ってそう思い込むのか、俺には理解できないが。アンタは何も罪もない人達を…殺してきたんだよ」
「殺した? だった、生きていたらまたストーカー行為をされるわ。仕方ないでしょう? 」
「仕方ないだけで人を殺すことは許されない。アンタがやった事は殺人。一方的な思い込みでやった殺人にすぎないよ」
「殺人…」
殺人と言う言葉に美和の目つきが豹変してゆくのが分かった。
「もういいだろう? 俺はアンタの事を何とも思っていない。むしろ無差別に人を殺す殺人者としか思わないよ」
「殺人者…私が…殺人者…? 」
「あんたは俺の子をも殺そうとした。ただ抱き着こうとしただけのようだが、そのことで俺は事故に遭って視力を失った。これは殺人未遂に値する可能性も高いよ」
「殺人…未遂…」
「わかったなら、素直に自主することだ。もう逃げられないだろうからな」
それだけ言うと幸太は美和の傍を通り越えて歩いて行った。
「私は殺人者…殺人…」
殺人と言う言葉を繰り返してゆき美和の表情が見る見るうちに豹変してゆく。
初めの無邪気そうな愛しているモードではなく恐ろしい魔女のような目に変わって行った。
「殺人…そうよ、私は…」
くるっと振り向いた美和はドレスをまくって太ももに備え付けていたナイフを取り出した。
「そうよ…私は殺人を愛しているの! 」
遠ざかる幸太に向かってナイフを構えて走ってゆく美和。
「愛している…愛しているの! 私は…殺人を愛しているの! 」
走って行った美和は幸太の背中に向かってナイフを突き刺そうとした!
「まちなさい! 」
声がして美和の動きがピタッと止まった。
幸太はハッとなって振り向いた。
「誰? 私と止めるのは…」
恐ろしい目つきで美和が振り向いた。
「これ以上やめなさい! 」
美和を止めたのは愛良だった。
「あんた…またストーカー? 愛する殺人を邪魔するなら、アンタから殺す! 」
尖ったナイフを愛良に突き付けた美和は恐ろしい目つきのまま歩み寄って行った。
「まて! やめろ! 」
幸太が駆け寄ろうとしたが愛良が手で制御した。
「…殺す…みんな死ねばいい…」
ピタッと愛良の目前で足を止めた美和は、ナイフを突きだしたまま睨み付けてきた。