妹の彼が好きな人はおデブのお姉さんだった ~本当の事を伝えたくて~
母との蟠りを消して

 広いお屋敷のような和風な家に幸太は見惚れていた。
 まるで何かのドラマにでも出てきそうな立派な家で、使っている素材も高そうな素材で驚いている。


 愛良の部屋はその中でも洋間で作られている。
 広々とした部屋に幸太は驚いていた。

 中央にあるソファーに座って愛良が紅茶を入れてくれた。

 とてもいい香りのアップルティー。その香りをかぐと気持ちがリラックスできる。

「なんだかすごく緊張していたようだけど、大丈夫だった? 」
「今は落ち着いた。でもすごく緊張した…兄貴は先に結婚しているけど、こんな緊張したのかな? 」
「きっと同じだったと思うわよ」

 紅茶を一口飲んだ愛良を幸太はそっと見た。

「ねぇ愛良。俺は爺ちゃんだけ挨拶してくれればいいから」
「どうして? 」
「俺は、花村家にはもうずっと帰っていない。たまに様子を見に行ったこともあったけど…兄貴達と楽しそうに過ごしている姿を見ていたら。俺の居場所はないって思えたんだ」
「そうなの? 」
「兄貴と姉ちゃんは双子で、二人とも優秀だし。俺は…」

 ちょっと何かをごまかすように幸太は紅茶を飲んだ。

「幸太さんだって立派じゃない」
「え? だって…」
「どうして自分の事を、そんな言い方するの? まだまだ甘えたい年頃だったのに、一人でお爺ちゃんの所に養子にいっちゃうくらいよ。私ならできなかったと思うわ」
「あれは…爺ちゃんが困っていたから…」
「それだけじゃないでしょう? 」

 そっと幸太の手に手を重ねた愛良。

「本当はあの時止めてほしかったんじゃないの? 」
「そんな事ないよ。俺が決めた事だったし」
「じゃあ、どうして家族と一度も会おうとしないの? 」
「それは、俺はもう爺ちゃんの家に行って。爺ちゃんの子供になったからさ…」
「そうじゃないって私は思うのだけどね」

 口を動かして幸太はごにょごにょと何か言っている。
 言うのが恥ずかしいのか上手く言葉にできないのか…。だが、そんな幸太の横顔を見ているとまだ幼い子供の様に見える。
 あの時一人で養子に行くと言って車で去って行った幸太のままのようだ。

「ねぇ幸太さん。お母さんの事どう思っているの? 」
「え? どう思っているって…別に…母さんは母さんだから…」
「そうじゃなくて、お母さんの事を好きか嫌いか聞いているの」
「え? 」

 動揺して目を泳がせている幸太を見ていると愛良は幸太が実はお母さんの事が大好きなのだとよく判る。
 以前、麗華からお母さんが足が不自由だと聞いた。きっと幸太はそんなお母さんに負担をかけたくないと思ったのだろう。
 お兄さんとお姉さんが双子で何もかも同時だとすれば、お母さんが不自由な体で大変だと見ていたに違いない。
 
「ねぇ幸太さん。お母さんに会いに行きましょう」
「え? い。いいって…きっと、俺の事なんか忘れていると思うから…」
「それなら思い出させてあげればいいじゃない。幸太さんだって、お母さんが産んだ子供なんだから。俺もいるんだよって、思い出させればいいでしょう? 」
「よせよ…そんな恥ずかしい…この歳になって、今更母親なんか…」

 ピピッ。
 二人が話していると幸太のスマホが鳴った。

「誰だろう…」
 着信を見ると登録がなく知らない番号たっだ。

「はい…」
 ちょっと警戒気味に康太が電話に出た。
(幸太? 幸太よね? )
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