妹の彼が好きな人はおデブのお姉さんだった ~本当の事を伝えたくて~
電話を切った幸太の表情がとても和らいでいた。
「愛良、今度の休みの日。俺の実家に、一緒に行ってくれる? 」
「ええ、もちろんよ。」
傍で見ていた愛良が満面の笑みを浮かべて答えた。
その笑みに釣られて幸太も笑った。
その後、幸太は話してくれた。
母は子供の頃に交通事故で左足を複雑骨折した。
それが原因で、左足首舌を切断する事になり、義足生活をしていた。
だけど母は、パラリンピックに出てマラソンで金メダルを取るくらいすごい人間なんだと。
検察官になり、一生独身を決めていたが、父が惚れ込んで猛烈アタックをしてやっと結婚したと聞いている。
ハンデを背負って生きてきて、母としても頑張っている母の事を馬鹿にしている。
そんな奴らが許せなくて、まず初めに考えたのは母が姿を見せない事だった。
だから、学校に来ないように言った。
でも母は、素直に分かったと言ったが、とても悲しそうな顔をしていたのを覚えている。
幸太は自分がいなくなれば、負担が減るのではないかと思い、養子に行き決意をした。
負担をかけてはいけないと思って、家には帰ってはいけないって思ったが。
時々、様子が気になり見に行った。
だけどどうしてもチャイムが押せなくて、そのまま帰るばかり。
そんなことを繰り返しているうちに、時間だけが過ぎてい行き幸太は大人になってしまった。
もう大人だから今更家族に会いたいとか、そんなことはもういいやと思っていたが。
母からの電話でお互いが同じ思いでいた事を知って、遠回りしていただけだったと今更知った幸太。
日曜日の昼下がり。
16年ぶりに幸太は花村家に戻って来た。
相変わらずの大きなお屋敷に、綺麗な庭、母がお気に入りのバラの花が花壇には綺麗に咲いている。
いつものスーツ姿でやって来た幸太。
愛良はゆったりしたブルーのワンピースに、白いカーティガンを羽織っている。
チャイムを鳴らすと、足を引きずりながら幸太の母が一番にできてた。
幸太と同じ髪色で肩まで届くロングヘヤーが魅力的で、切れ長のクールな目元がきりっとしている。
とても若々しくて、幸太のような大きな子供がいるようには見えない。
清楚なブルーのブラウスに茶色いロングフレアスカートがとても似合っている。
「幸太…」
幸太を見るなりギュッと抱きしめてきた母。
「おかえりなさい。…やっと、帰ってきてくれたのね…」
「…ただいま。…遅くなって、ごめん…」
照れ臭そうに謝る幸太を見ながら、母が愛良を見る。
「初めまして、幸太の母です。」
「初めまして、末森愛良です。」
名前を名乗った愛良をじっと見つめた幸田の母。
「…あの時の…あの時の子よね? ほら、覚えている? 門の前で、家の中の様子を見ているようだったから。良かったら、入ってて声をかけたことあったでしょう? 」
言われて愛良は遠い記憶を思い出す。