あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
プロローグ
窓から射し込む月の光が、美しい肢体を艶かしく浮かび上がらせる。

カーテンもブラインドも必要としない、高層マンションの寝室。

引き締まった無駄のない、まるで彫刻のような美しいその身体を、莉帆(りほ)はぼんやりと見上げていた。

服の下にこんなにも男らしく、がっしりとした身体を隠していたとは…

(着痩せするタイプなのかも。和也さんの方が体格良さそうに見えたのに)

「随分余裕だな。何を考えている?」
「…いえ、何も」
「あいつのことか?」

思わず目を合わせてしまった。

なぜ?
もしかして、知っていた?

「忘れろ。興醒めだ」

ちゃんと務めを果たせと言いたいのだろう。

莉帆は目を閉じて身体の力を抜く。

ほど良く沈み込み、包み込まれるような心地良さが、いかにこのベッドが高級であるかを物語っていた。

ギ…とマットレスがきしみ、大きな影が覆いかぶさる。

どうでもいい。
色々ありすぎて、頭なんてとっくに働かなくなっていた。

頬に触れる右手は大きくて温かい。
左腕が背中に回され、グッと抱き寄せられる。

上半身がベッドから少し浮き上がり、仰け反った首筋にチュッとキスが落とされた。

「今は、忘れろ」

低く冷たい声。
だが身体に触れる手も、唇も、言葉とは裏腹にひどく優しい。

「忘れさせてやる」

耳元で息を吹き込むようにささやかれ、ゾクッと身体が震えた刹那、熱く奪うように口づけられた。

それが始まりの合図のように。

何度も何度も繰り返されるキスに、あっという間に呼吸は乱れる。

吐息をついてもすぐにキスで呑み込まれ、逃れようとしても腕にギュッと閉じ込められた。

バスローブの胸元から潜り込んだ手が、素肌を暴いていく。

抵抗はしない。
もう、何もかもどうでもいい。

すると一度身体が離れた。

ぼんやりと目を開けると、ベッドサイドテーブルに置いてあったウイスキーのグラスをグイッと煽り、そのまま深くキスをしてきた。

口内がカッと熱くなる。

ゴクリとウイスキーを飲み込むと、視界が揺れ、頭の中に霧がかかる。

アルコールの残る唇で敏感な身体のあちこちに口づけられ、その度にまるで火が灯されたように熱くなった。

思考回路が止まり、感覚だけが研ぎ澄まされていく。

(忘れ…させて)

その言葉を最後に、莉帆の頭は考えることをやめた。
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