あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
急転直下
それから数日が経ったある日の午前中。

オフィスに入って来た暗い表情の和也に、莉帆は驚いて立ち上がる。

「お疲れ様です」

声をかけてもいつものように目配せすることはなく、和也は黙ったまま莉帆の横を通り過ぎて社長室へと消えた。

(どうしたのかしら)

気になりつつデスクで業務をこなしていると、しばらくして社長室のドアが開き、和也が姿を現す。

だが打ちひしがれ、顔を伏せたまま足早にオフィスを横切る和也に、莉帆は何も言葉が出てこなかった。

「ね、岡部さんどうしたんだろうね?」

成美が向かいの席から身を乗りだし、声を潜めて聞いてくる。

「ほんとですね…」

莉帆はそう答えるのが精一杯だった。

するといきなりガチャッとドアが開く音がして、社長室から社長が顔を覗かせた。

「莉帆、ちょっと」
「は、はい!」

真剣な表情で手招きされて、莉帆は弾かれたように立ち上がる。

「ええ?!どうしたの?何かあった?莉帆ちゃん」
「さあ、私も分からないです」

半泣きになりながらすがるように成美を見ると、「大丈夫よ、きっと。とにかく行っておいで」と笑顔で励まされた。

莉帆は頷くと、急いで社長室に向かった。
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