あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
「失礼いたします。お呼びでしょうか?」
「うん。ちょっとドアに鍵をかけてくれる?」
「え?はい、かしこまりました」
そんなことを言われたのは初めてだ。
莉帆は戸惑いながらカチャリと鍵をかけ、社長を振り返った。
「あの、何かありましたでしょうか?」
厳しい表情のままの社長に、恐る恐る聞いてみる。
社長は大きくため息をつくと、デスクの上に置いてあった1枚の紙を莉帆に見せた。
「莉帆、これを読んでみて」
「はい、失礼いたします」
デスクに近づいて受け取り、目を落とした途端、莉帆は息を呑んで大きく目を見開いた。
「こ、これ…」
それは週刊誌の記事の1ページ。
センセーショナルな大きな見出しには…
『イケメントップモデル禅 マネージャーのふしだらな武勇伝』とある。
莉帆はドクドクと心臓が早鐘を打つのを感じながら記事を読み進めた。
『今や国内のみならず海外からもラブコールが絶えないカリスマイケメンモデルの禅。その敏腕マネージャーとして業界でも一目置かれていたO氏は、数々の撮影現場で枕営業を強いていたことでも有名である。本誌記者は、実際にO氏に声をかけられて一夜を共にした美人モデルのYさんの直撃取材に成功した』
信じられない。
手が震える。
これは一体どういうこと?
頭の中に浮かび上がる言葉に気を取られ、なかなか内容が頭に入って来ない。
何度も読み返し、ようやく大体のことが理解できた。
(つまり和也さんは、禅の撮影現場で色んな女性に声をかけていたってこと?禅と一緒に仕事がしたいデザイナーや雑誌編集者、有名になりたい駆け出しのモデル達に)
禅との仕事が欲しければ、俺を通せ
そう言ってホテルに呼び出し、肉体関係を強要していた、と書かれていた。
(信じられない。嘘よね?週刊誌なんだもの。まったくのでっち上げに決まってる。だって想像できないもの。和也さんがそんなことしてたなんて)
莉帆、と優しく微笑んで抱きしめてくれる和也の笑顔を思い浮かべ、デタラメに違いないと頷いた時だった。
はあ、と社長の大きなため息が聞こえてきた。
「まさかこんなことになるなんて。禅がパリコレに挑戦するこの時期を待って記事を載せることにしたのね。もう随分前からしっぽは掴んでいたってことでしょう」
ハッとして莉帆は顔を上げる。
「そんな、社長。この記事が本当だと思っていらっしゃるのですか?週刊誌なんて、デタラメな記事ばかり…」
「岡部が認めたのよ!」
声を張って莉帆の言葉を遮った社長に、莉帆は思わずビクッと身体を固くする。
(和也さんが、認めた?まさかそんな…。だって和也さんは、莉帆って私に優しく…。いつだって私を…)
社長は右手でこめかみをギュッと押さえながら、苦しそうに呟く。
「禅の将来に泥を塗るような真似を、まさか岡部が。私の見る目がなかったわ。全ては私の責任です」
莉帆はもう何も言葉が出てこない。
呆然としていると、気持ちを入れ替えたように社長が顔を上げた。
「この記事は明日発表されます。ここにも多くのマスコミが殺到するでしょう。私が矢面に立ち、謝罪します。あなた達にも大変な苦労をかけてしまうけど、対応をお願いします」
「…社長」
並々ならぬ社長の覚悟を感じて、莉帆も気持ちを引き締めた。
「かしこまりました」
今はプライベートな感情は後回しにしなければ。
とにかくこれは会社の一大事なのだ。
「それから、莉帆。あなたを真っ先に呼んだのは他でもない。岡部の後任として禅のマネージャーを務めて欲しいの」
えっ!と莉帆は目を見張る。
「そ、そんな。私なんかに務まるはずありません。しかもこんな大事な時に…。フランスにだってもうすぐ行くんですよね?」
「そうよ。でもあなたしかいないの。今回の件のイメージを払拭する為、禅の次のマネージャーは女性にする。1か月不在にしてパリへ行っても支障がないのは、事務職のメンバーだけ。禅の送り迎えの為に車の免許が必要。有効なパスポートを現在所持していて、英語のやり取りができるスキルを持っている。この条件に合うのが莉帆だけなのよ」
いえ、でも、あの…と、莉帆が必死で断ろうとすると、社長はいきなり深々と頭を下げた。
「お願いします。会社の最大のピンチなの。どうか力を貸してちょうだい」
「しゃ、社長!そんな、お顔を上げてください」
「じゃあ、引き受けてくれる?」
そう言われればもう何も言い返せない。
「はい。私に務まるか不安で一杯ですが、できる限り尽力いたします」
「そう、ありがとう!莉帆」
ようやくホッとしたように肩の力を抜く社長に、莉帆はなんとか報いようと心に決めた。
「うん。ちょっとドアに鍵をかけてくれる?」
「え?はい、かしこまりました」
そんなことを言われたのは初めてだ。
莉帆は戸惑いながらカチャリと鍵をかけ、社長を振り返った。
「あの、何かありましたでしょうか?」
厳しい表情のままの社長に、恐る恐る聞いてみる。
社長は大きくため息をつくと、デスクの上に置いてあった1枚の紙を莉帆に見せた。
「莉帆、これを読んでみて」
「はい、失礼いたします」
デスクに近づいて受け取り、目を落とした途端、莉帆は息を呑んで大きく目を見開いた。
「こ、これ…」
それは週刊誌の記事の1ページ。
センセーショナルな大きな見出しには…
『イケメントップモデル禅 マネージャーのふしだらな武勇伝』とある。
莉帆はドクドクと心臓が早鐘を打つのを感じながら記事を読み進めた。
『今や国内のみならず海外からもラブコールが絶えないカリスマイケメンモデルの禅。その敏腕マネージャーとして業界でも一目置かれていたO氏は、数々の撮影現場で枕営業を強いていたことでも有名である。本誌記者は、実際にO氏に声をかけられて一夜を共にした美人モデルのYさんの直撃取材に成功した』
信じられない。
手が震える。
これは一体どういうこと?
頭の中に浮かび上がる言葉に気を取られ、なかなか内容が頭に入って来ない。
何度も読み返し、ようやく大体のことが理解できた。
(つまり和也さんは、禅の撮影現場で色んな女性に声をかけていたってこと?禅と一緒に仕事がしたいデザイナーや雑誌編集者、有名になりたい駆け出しのモデル達に)
禅との仕事が欲しければ、俺を通せ
そう言ってホテルに呼び出し、肉体関係を強要していた、と書かれていた。
(信じられない。嘘よね?週刊誌なんだもの。まったくのでっち上げに決まってる。だって想像できないもの。和也さんがそんなことしてたなんて)
莉帆、と優しく微笑んで抱きしめてくれる和也の笑顔を思い浮かべ、デタラメに違いないと頷いた時だった。
はあ、と社長の大きなため息が聞こえてきた。
「まさかこんなことになるなんて。禅がパリコレに挑戦するこの時期を待って記事を載せることにしたのね。もう随分前からしっぽは掴んでいたってことでしょう」
ハッとして莉帆は顔を上げる。
「そんな、社長。この記事が本当だと思っていらっしゃるのですか?週刊誌なんて、デタラメな記事ばかり…」
「岡部が認めたのよ!」
声を張って莉帆の言葉を遮った社長に、莉帆は思わずビクッと身体を固くする。
(和也さんが、認めた?まさかそんな…。だって和也さんは、莉帆って私に優しく…。いつだって私を…)
社長は右手でこめかみをギュッと押さえながら、苦しそうに呟く。
「禅の将来に泥を塗るような真似を、まさか岡部が。私の見る目がなかったわ。全ては私の責任です」
莉帆はもう何も言葉が出てこない。
呆然としていると、気持ちを入れ替えたように社長が顔を上げた。
「この記事は明日発表されます。ここにも多くのマスコミが殺到するでしょう。私が矢面に立ち、謝罪します。あなた達にも大変な苦労をかけてしまうけど、対応をお願いします」
「…社長」
並々ならぬ社長の覚悟を感じて、莉帆も気持ちを引き締めた。
「かしこまりました」
今はプライベートな感情は後回しにしなければ。
とにかくこれは会社の一大事なのだ。
「それから、莉帆。あなたを真っ先に呼んだのは他でもない。岡部の後任として禅のマネージャーを務めて欲しいの」
えっ!と莉帆は目を見張る。
「そ、そんな。私なんかに務まるはずありません。しかもこんな大事な時に…。フランスにだってもうすぐ行くんですよね?」
「そうよ。でもあなたしかいないの。今回の件のイメージを払拭する為、禅の次のマネージャーは女性にする。1か月不在にしてパリへ行っても支障がないのは、事務職のメンバーだけ。禅の送り迎えの為に車の免許が必要。有効なパスポートを現在所持していて、英語のやり取りができるスキルを持っている。この条件に合うのが莉帆だけなのよ」
いえ、でも、あの…と、莉帆が必死で断ろうとすると、社長はいきなり深々と頭を下げた。
「お願いします。会社の最大のピンチなの。どうか力を貸してちょうだい」
「しゃ、社長!そんな、お顔を上げてください」
「じゃあ、引き受けてくれる?」
そう言われればもう何も言い返せない。
「はい。私に務まるか不安で一杯ですが、できる限り尽力いたします」
「そう、ありがとう!莉帆」
ようやくホッとしたように肩の力を抜く社長に、莉帆はなんとか報いようと心に決めた。