あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
夕食に、蒸し鶏と大葉の大根おろし添え、野菜たっぷりのポトフ、鮭とちりめんじゃこの混ぜご飯を作ってダイニングテーブルに並べると、莉帆はすぐにまたソファの前に戻った。

社長が会見したことで、一斉に取引先や関係者から問い合わせのメールが届き、その対応に追われていた。

「おい、食べないのか?」

禅が声をかけるが、莉帆は「今手が離せないので」と答えるばかりだった。

(とにかく禅のパリ行きは進めなきゃ。予定通りだと関係各所に伝えて、スポンサーにお詫びのメールと、今後は私が窓口になることを伝えて…。あとは何かある?連絡漏れはないかな。あ!確か和也さん、パリの現地スタッフともやり取りしてた気がする。誰だろう?メールを送った形跡は…)

その時、おい!という声と共に右手が掴み上げられ、莉帆は驚いて顔を上げる。

禅が怒ったように見下ろしていた。

「何回呼んだら聞こえるんだ?」
「あ、ご、ごめんなさい。つい没頭してしまって。あの、どうかしましたか?」
「いい加減何か食べろ」
「え?誰がでしょうか」
「お前だ。ここに来てから何も飲まず食わずだろう」

そう言えば、と莉帆は時計を見る。

昼前にここに着いて、今は夜の8時だった。

だが驚くほどお腹は空いていない。

「あの、私は平気です」
「人間だったら平気なはずない」
「でも、本当に大丈夫ですから」

そう言ってもう一度パソコンのキーボードに手を置くと、グイッと腕を抱えられて立たされる。

そのままダイニングテーブルまで連れて行かれ、椅子に座らされた。

「そこを動くな」

冷たく言い放ち、禅はキッチンへ向かう。

しばらくして混ぜご飯をお茶漬けにしたものとレンゲを莉帆の前に置いた。

「食え」

脅し文句のように命令され、莉帆はおずおずと手を伸ばす。

小さくすくって口に入れると、じわりと温かさが口に広がる。

ゆっくり飲み込むと、ホッと一息ついた。

「美味しい…」

そこでようやく身体が欲していることに気づき、莉帆はパクパクと食べ始める。

禅はその様子に安心し、食後のお茶を淹れた。
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