あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
中身は…
そのあと2人は、真面目に顔を寄せ合ってスケジュールを確認する。

パリコレの開催時期より2週間早く現地入りする予定だった。

「パリコレに出たいなら、現地のモデル事務所に所属するのが通常の流れなんだ」
「じゃあ、禅もこれからパリのモデル事務所に入るってこと?」
「そう。既にコンタクトは取ってあるから、パリに着いたらまずはそのモデル事務所に向かう。無事に受け入れてもらえたら、そこでコンポジット、略してコンポジを撮影するんだ。モデルにとってはそれが名刺代わりになる。で、そのあとはひたすらキャスティングって呼ばれるオーディションを受けまくる。翌日辺りに合格の連絡が来れば、晴れてパリコレのランウェイを歩けるってワケ」
「ちょちょ、ちょっと待って!」
「なに?」

莉帆は混乱した頭の中を整理しながら質問する。

「パリコレなんて大きなショー、てっきり何か月も前にオーディションで出演者を選ぶんだと思ってた」
「だな。でもさ、それだと合格決まったあとブックブクに太って、ショーの当日、あんた誰?みたいな事態になったら困るからじゃね?」
「ま、まあ、それも一理あるかも。だけどそれにしたって、そんな直前に決まるなんて、心の準備もできないんじゃない?」
「ああ。合格の連絡来ても、実際に当日控え室に行って着替えるまでは何が起こるか分からないらしい。しかもどんな衣装を着るのかも、その時初めて知るっていう」

ええー?!と、莉帆は仰け反って驚く。

「そ、そんなスリリングなショーなの?パリコレって」
「ああ。血が騒ぐぜー!絶対に合格掴み取ってやる」

メラメラと闘志をみなぎらせる禅に、莉帆は圧倒されながらも決意した。

(私も、全力で禅をサポートしてみせる!)

暗く悲しい気持ちはもうなかった。

莉帆はキリッと表情を引き締めると、再びパソコンに向かって念入りにスケジュールを確認していった。
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