あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
「いいわよー、禅。そのままそのまま」

カシャッカシャッと、シャッターを切る音が響く度に、スーツ姿の禅は流れるように視線とポーズを変えていく。

切れ長の目で挑むように鋭い視線を向けたあと、フッと逸して伏し目がちにうつむく。

遠くに目をやったかと思えば、急に目が合うようにカメラを見つめる。

身体の角度を少し変えて斜めに構えたり、重心を乗せかえて長い足のラインを見せつけたり。

ポケットに手を引っ掛けたかと思うと、ネクタイの首元をクッと緩めたり。

その様子に莉帆はもう顔を真っ赤にしながら、両手で口元を覆って釘付けになっていた。

「はい、オッケー!」

源さんのひと言で、その場の空気がようやく動く。

「はあ、相変わらずかっこ良かったー」

隣にいたヘアメイクやスタイリストの女性陣が、うっとりと呟いた。

だが莉帆は、息も絶え絶えにぐったりと壁に手をつく。

(く、苦しい。私、息するの忘れてた)

あれが禅?
本当に?
マンションの部屋で軽口叩いてた、あの禅?

(信じられない。何?あの破壊力。私がホントに子リスだったら、ヒクッて金縛りにあってたかも?源さんの言う通り、色気炸裂、セクシーで超絶かっこ良かった)

両手を壁についたままゼエゼエと息を整えていると、ふいに後ろから「莉帆」と呼ばれた。

「は、はい!」

直立不動で振り返ると、セットした髪をクシャッと右手で崩しながら禅が近づいて来た。

「着替えたら帰ろう。ちょっと待ってて」
「はははい!かしこまりました」

すると禅は、ん?と首をひねる。

「どうかしたか?」
「い、いえ、何も」
「その割りには顔が真っ赤だぞ」

言われて莉帆は、更に顔を赤くする。

それを見て禅はニヤリと笑い、莉帆の顔のすぐ近くの壁に手をついた。

身を屈めると、莉帆の耳元でそっとささやく。

「今夜も抱かれたくなった?」

ボン!と莉帆の頭が沸騰する。

「いいいいえいえ、結構です。どうぞお気遣いなく。それではお着替えをどうぞ」
「分かったよ、素直になれないマネージャーさん」

クスッと笑って背を向けた禅に、莉帆はまたしても呼吸を忘れて見とれていた。
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