あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
「お疲れ様です。何かありましたか?」
ホテルのロビーのソファに、莉帆はディレクターと向かい合って座る。
「うん、あの…。ちょっと禅本人には言い出しにくくて」
それだけで、良い話ではないことは分かった。
「このままだと、もしかして失敗に終わることも考えなきゃいけないかなって。もちろん、諦めるつもりはないよ?だけど、想定しておく必要はあるかなと」
ディレクターはポツリポツリと話し出す。
禅は今、有名ブランドのキャスティングばかり回っていること。
合格しづらい上に、アジア人をほとんど採用しないブランドが多いこと。
もしこのままどこからも呼ばれなかった時に、失敗に終わったと放送するのは、禅にとっても好ましくないだろうということ。
「だからね、オフスケジュールのキャスティングを受けるか、もしくはもっと知名度の低い、アジア人も積極的に採用しているブランドを受けるか、莉帆ちゃんから禅に提案してもらえないかな?」
オフスケジュールとは、パリコレを主催するフランスオートクチュール・プレタポルテ連合協会の公式スケジュールに登録されていない非公式のショーのことで、厳しい基準を満たしたトップブランドが名前を連ねる公式スケジュールよりも受かりやすい。
そこなら、すぐに合格がもらえるだろう。
だが莉帆はディレクターと視線を合わせると、首を横に振った。
「お言葉ですが、私から禅にその提案はいたしかねます」
「え?どうして?どこも受からなかったら事務所としても困るでしょ?禅の名前に傷がついちゃうし」
「禅はこのパリコレに、こだわりを持って挑んでいます。オフスケジュールではなく、世界トップクラスのブランドのショーに。そしてアジア人を敬遠しているブランドに敢えて挑戦しています。そこを突破してこそ、禅だからです。非公式のショーに出たことで、見事成功!などと放送される方が、禅にとってはマイナスです」
きっぱりと言い切る莉帆に圧倒されてから、でも…とディレクターは続ける。
「じゃあ、もしどこも受からなかったら、失敗に終わったって放送することになるけど、それでもいい?」
「失敗には終わりません。禅は必ずやってのけます。たとえクルーの皆さん全員が諦めても、私だけは最後まで禅を信じ続けます。私は、禅のたった一人のマネージャーですから」
凛とした莉帆の言葉に、ディレクターはうつむいてからゆっくりと口を開いた。
「分かった。禅と莉帆ちゃんの覚悟はヒシヒシと伝わってきたよ。ごめん。俺も腹くくって挑むから。この先もがんばろう」
「はい!ありがとうございます」
莉帆は明るい笑顔を浮かべてしっかりと頷いた。
ホテルのロビーのソファに、莉帆はディレクターと向かい合って座る。
「うん、あの…。ちょっと禅本人には言い出しにくくて」
それだけで、良い話ではないことは分かった。
「このままだと、もしかして失敗に終わることも考えなきゃいけないかなって。もちろん、諦めるつもりはないよ?だけど、想定しておく必要はあるかなと」
ディレクターはポツリポツリと話し出す。
禅は今、有名ブランドのキャスティングばかり回っていること。
合格しづらい上に、アジア人をほとんど採用しないブランドが多いこと。
もしこのままどこからも呼ばれなかった時に、失敗に終わったと放送するのは、禅にとっても好ましくないだろうということ。
「だからね、オフスケジュールのキャスティングを受けるか、もしくはもっと知名度の低い、アジア人も積極的に採用しているブランドを受けるか、莉帆ちゃんから禅に提案してもらえないかな?」
オフスケジュールとは、パリコレを主催するフランスオートクチュール・プレタポルテ連合協会の公式スケジュールに登録されていない非公式のショーのことで、厳しい基準を満たしたトップブランドが名前を連ねる公式スケジュールよりも受かりやすい。
そこなら、すぐに合格がもらえるだろう。
だが莉帆はディレクターと視線を合わせると、首を横に振った。
「お言葉ですが、私から禅にその提案はいたしかねます」
「え?どうして?どこも受からなかったら事務所としても困るでしょ?禅の名前に傷がついちゃうし」
「禅はこのパリコレに、こだわりを持って挑んでいます。オフスケジュールではなく、世界トップクラスのブランドのショーに。そしてアジア人を敬遠しているブランドに敢えて挑戦しています。そこを突破してこそ、禅だからです。非公式のショーに出たことで、見事成功!などと放送される方が、禅にとってはマイナスです」
きっぱりと言い切る莉帆に圧倒されてから、でも…とディレクターは続ける。
「じゃあ、もしどこも受からなかったら、失敗に終わったって放送することになるけど、それでもいい?」
「失敗には終わりません。禅は必ずやってのけます。たとえクルーの皆さん全員が諦めても、私だけは最後まで禅を信じ続けます。私は、禅のたった一人のマネージャーですから」
凛とした莉帆の言葉に、ディレクターはうつむいてからゆっくりと口を開いた。
「分かった。禅と莉帆ちゃんの覚悟はヒシヒシと伝わってきたよ。ごめん。俺も腹くくって挑むから。この先もがんばろう」
「はい!ありがとうございます」
莉帆は明るい笑顔を浮かべてしっかりと頷いた。