あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
掴み取った世界の切符
翌日の夜。

「おめでとう!禅!」

莉帆に続いてテレビクルー達も「おめでとう!」と声を上げる。

「ありがとうございます。皆さんのおかげです。ヤキモキさせてすみません!本番はバッチリ決めて、撮れ高も最高にしてみせます!」

あはは!と笑い合ってから、皆で乾杯!とグラスを掲げた。

先ほど舞い込んできたキャスティング合格の連絡。

禅は見事、フランスのトップブランド『 Clair de lune クレール・ドゥ・リュンヌ』のアジア人初のショーモデルとなった。

パリのモデル事務所から電話を受け、禅は信じられずにしばし呆然としていた。

英語の聞き間違いか?と、コーディネーターの真由美に電話を代わってもらい、何度も確認してもらってようやく実感した。

本番は明日の14時。

恐ろしいほど直前の決定だった。

本当に喜ぶのは、明日のステージを成功させてから。

それでも莉帆は嬉しさを抑え切れず、何度も禅に「おめでとう!」と声をかけていた。

「ありがとう、莉帆。全部お前のおかげだ」
「ううん、禅の実力だよ。すごいね!本当にやってのけたね!めちゃくちゃかっこいいよ」
「まだまだこんなもんじゃねえよ。明日、最高の舞台でギラッギラの俺様を見せてやる」
「ひゃー!帰って来たよ、俺様の禅様が。明日、楽しみにしてるね!ギットギトのテッカテカの禅を」
「おい!俺は脂ぎったハゲ親父じゃねえ!」

莉帆は楽しそうに「想像したらウケるー!」と笑い転げている。

「莉帆、そうやって笑ってられるのも今夜だけだぞ?明日の今頃は、ヒーヒー泣かせてやるからな」

耳元でねっとりとささやかれ、莉帆は思わずヒエッ!と硬直する。

「色々、楽しみだな、明日」

禅は莉帆に、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて言った。
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