あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
次の日は、朝から気持ちの良い青空が広がっていた。

禅はいつものようにランニングを済ませると、莉帆と一緒に部屋で朝食を食べる。

ショーの本番3時間前の11時に会場入りした。

大きな公園内に設営された会場は、外観は単なる巨大な箱のように見えたが、中に入った途端、莉帆は息を呑んで目を見開いた。

「すごい…。まるで大聖堂みたい」

ステンドグラスが輝き、神聖で厳かな雰囲気の中、静かな夜をイメージした照明は、莉帆を別世界へといざなう。

(このステージに禅が立つんだ)

そう考えただけで、肌が粟立つようなゾクゾクとした感覚が込み上げてきた。

先ほど「ステージ、楽しみにしてる」と送り出した禅は、今頃ヘアメイクの最中だろう。

本番まではかなり時間があるが、莉帆はそのまま会場内で待つことにした。

リハーサルの時以外は中で待っていてもいいと許可をもらっていた。

コーディネーターの真由美があちこちに働きかけてくれたおかげで、テレビカメラの撮影もOK。

莉帆もステージすぐ前の特等席で見られることになった。

「真由美さん、色々とありがとうございました」
「ううん。私こそ、こんな素晴らしい経験をさせてくれてありがとう。『クレール・ドゥ・リュンヌ』は、フランスが誇る伝統あるトップブランドよ。そのステージに日本人が立つなんて!もうね、フランス人の夫もたまげてたわよ。歴史を変えた!って大騒ぎ。私も同じ日本人として鼻が高いわ。禅くんと莉帆ちゃんに感謝してる。これからもずっと応援してるからね」
「はい!ありがとうございます」

ふふっと微笑み合い、本番を今か今かと待つ。

テレビクルーも撮影の準備を終え、皆で祈るようにステージを見つめた。

そして、その時はやって来た。
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