あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
「どど、どういうことー?」

ディナーを食べに入ったレストランで、莉帆は驚いて禅に詰め寄る。

「何の契約をしたの?アジア代表の、なんですって?」
「だから、今後アジアでショーを開催したり、アジア各国にブランドを発信させる際のオフィシャルモデルだって」
「オフィシャル?『クレール・ドゥ・リュンヌ』が公式に認めたモデルってこと?」
「そうらしいな。これまでアジア人モデルを敬遠してきたって誤解を解く為にも、今後はアジアでの活動に力を入れたいらしい」

らしいって…と莉帆は拍子抜けする。

「それってすごいことよね?嬉しくないの?禅」
「ん?もちろん嬉しいよ。でもさ、それ以上に気を引き締めてる。これまでは『クレール・ドゥ・リュンヌ』に挑むチャレンジャーだったのが、これからは『クレール・ドゥ・リュンヌ』を背負って仕事しなければいけない。生半可な気持ちではだめだし、浮かれて喜んでいる場合でもない」

そこまで言うと、禅は手を止めてフォークとナイフを置いた。

「けど、ゾクゾクするほど血が騒ぐ。やってやろうじゃないの」

力の宿った強い眼差しと、ニヤリと自信満々に笑う口元を見て、向かうところ敵なしとはこのことか、と莉帆は妙に納得する。

「莉帆、俺の挑戦はまだまだ終わらない。覚悟しとけよ?もっともっとすごい世界を見せてやる」

炸裂する俺様節に、莉帆は思わずクスッと笑う。

「もちろん。どこまでもあなたについていくから」

そう答える莉帆の顔にも不敵な笑み。

2人は大きく成長させてくれたパリの街に感謝しながら、一生忘れることなどできない思い出を胸に、日本へと帰国した。
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