あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
「あら、莉帆ちゃん。お疲れさ、まっ?!」

いつもの笑顔で顔を上げた成美は、オフィスに入って来た莉帆の後ろに禅の姿を見つけて絶句する。

成美だけでなく、他の社員達も時が止まったように固まっていた。

「お疲れ様です」

禅はその間を颯爽と歩いて社長室に向かう。

結局皆が我に返り「お疲れ様です!」と声をかけた時には、禅はもう社長室の中に消えていた。

「り、莉帆ちゃん。今日は一体どうしたの?禅は何の用事で来たの?」
「それが私にも分からなくて。ただ、事務所に寄ってくれって」
「そうなのね。まあ、フランスでの報告かもしれないわね。新社長に挨拶も兼ねて」

成美に言われて、ああ、そうかと莉帆も納得した。

だが、その割りには時間がかかっている。

デスクで仕事をしながら、莉帆は何度も時計を見上げた。

(もう2時間も経ってる…)

様子を見に顔を出してもいいだろうか?とソワソワし始めた時、ようやくドアが開いて禅が出て来た。

「お待たせ。帰ろう」

莉帆の横を通り過ぎながら、禅は前を見たまま声をかける。

その表情はいつもの見慣れた禅ではなく、真剣そのものだった。

「成美さん、お先に失礼しますね」

莉帆は手早くデスクを片付ける。

「うん、お疲れ様。またね、莉帆ちゃん」
「はい。失礼します」

他の社員達にも声をかけ、莉帆は急いで禅のあとを追った。
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