あなたと共に見る夢は〜俺様トップモデルの甘くみだらな包囲網〜
プライベートショット
「おかえり、莉帆。遅いから心配したぞ?」
マンションの玄関を開けると、ラフな格好の禅が莉帆を出迎えた。
「ただいま。事務所のみんなと放送見てたんだけど、そのあと電話が鳴り止まなくなってね。留守電だから出なくて良かったんだけど、明日からの対応をどうするか相談してたら遅くなっちゃって」
「電話?なんでそんなにたくさんかかって来たんだ?」
え、それは本気で聞いてます?と、莉帆は禅に眉根を寄せる。
「ん?どした?」
「いえ。知らぬは本人ばかりなり、と申しましょうか」
「ふーん。とにかくお疲れ様。今、コーヒー淹れる」
「ありがとう」
莉帆はうがいと手洗いを済ませると、スーツから部屋着に着替えてリビングに戻った。
パリから日本に帰国すると、莉帆はワンルームマンションから着替えや身の回りのものを少しずつ禅のマンションに移していった。
禅は「そんなまどろっこしいことしないで、引っ越し屋に頼んで部屋を引き揚げろ」と脅し…、いや、真顔で言っていたが、莉帆は事務所での自分の立場や禅のモデルとしてのキャリアを考えて、今はまだできないと答えていた。
とは言え、毎日禅のマンションに帰って来るのだから、あまり意味はないかもしれない。
それでもやはり自分の住まいは、まだ別にしておこうと莉帆は考えていた。
軽くおつまみを食べてから、ソファで禅と一緒にコーヒーを味わう。
そこで莉帆はふとさっきから引っかかっていたことを思い出した。
「ねえ、禅。テレビ放送見た?」
「ん?見てない」
はあー?!と莉帆は大声を上げる。
「うるせっ。声デカすぎだろ」
「だ、だって、見てないってまさか…。ホントに?」
「ああ。だってもう終わったことだろ?結果も分かってるのに。なんで見るんだ?」
「いやいやいや、なんで見ないのよ?普通見るでしょ?」
「そうか?まあ俺、子どもの頃から運動会のビデオとか見ないやつだったしな。過去にこだわらない男の美学だ」
「なにかっこつけてんのよ。そういう問題じゃない!」
ムキになると「莉帆こそなんでそんなに怒ってるんだ?」と逆に不思議がられた。
「もういい!禅に普通の感覚を求めた私が悪かったの」
「ん?まるで俺が普通じゃないみたいな言い方だな」
「ええ?!まるで自分は普通ですみたいな言い方しないで」
ムーッ!となる莉帆の肩を、禅がいきなり抱き寄せる。
「そう怒るなって。可愛い顔が台無しだぞ?」
耳元でささやかれ、途端に莉帆はシュルシュルと小さくなった。
「ほら、やっぱり可愛い」
そう言って、禅は莉帆の頬にチュッとキスをする。
「あの、禅?」
「ん?なに」
「えっと、ありがとう」
「なにが?」
「ショーが終わった日の、テレビのインタビュー。嬉しかった」
「どういたしまして。…って言いたいけど、なんのことか分からん」
はいー?とまたしても莉帆は真顔に戻る。
「ちょっと、私の感動を返してよ!」
「仕方ないだろ?テレビなんて、放送されるのはほんの一部分だけなんだから。どのシーンが使われたのなんか知らん」
「それは禅が見てないからじゃない。どうして見ないのよー!」
「だから、過去にこだわらない男の…」
「もういいもん!」
プイッとそっぽを向いてソファの端ににじり寄る莉帆を、禅は後ろから抱きすくめた。
「嘘。分かってる。だって俺、めっちゃ気持ち込めて言ったから。誰よりも一番近くで支えてくれたマネージャーを、心から愛してるって」
莉帆は胸をドキッとさせて禅を振り返る。
「禅…」
「莉帆、ありがとう。愛してるよ」
「私も。ありがとう、禅。大好きよ」
見つめ合うと、どちらからともなく顔を寄せてキスをする。
そっと唇が離れると、おでこをコツンと合わせた。
互いの吐息がすぐ近くに感じられて胸が高鳴る。
だが莉帆は、ん?と首をひねった。
「ねえ、テレビで愛してるなんて言ってないでしょ?」
「そりゃな。一応放送禁止用語は心得てる。でも心の中ではそう思ってた」
「ぶっ!放送禁止用語じゃないから」
「じゃあ、言っても良かった?莉帆ー!愛してる!って」
「だめ!やっぱり放送禁止用語!」
「だろ?まあ、今はまだな。そのうち叫ぶ」
「だめだったら!」
またしても言い合い、笑い合って、愛をささやき合う。
2人で過ごす時間は、何よりもかけがえのない、楽しくて幸せな時間だった。
マンションの玄関を開けると、ラフな格好の禅が莉帆を出迎えた。
「ただいま。事務所のみんなと放送見てたんだけど、そのあと電話が鳴り止まなくなってね。留守電だから出なくて良かったんだけど、明日からの対応をどうするか相談してたら遅くなっちゃって」
「電話?なんでそんなにたくさんかかって来たんだ?」
え、それは本気で聞いてます?と、莉帆は禅に眉根を寄せる。
「ん?どした?」
「いえ。知らぬは本人ばかりなり、と申しましょうか」
「ふーん。とにかくお疲れ様。今、コーヒー淹れる」
「ありがとう」
莉帆はうがいと手洗いを済ませると、スーツから部屋着に着替えてリビングに戻った。
パリから日本に帰国すると、莉帆はワンルームマンションから着替えや身の回りのものを少しずつ禅のマンションに移していった。
禅は「そんなまどろっこしいことしないで、引っ越し屋に頼んで部屋を引き揚げろ」と脅し…、いや、真顔で言っていたが、莉帆は事務所での自分の立場や禅のモデルとしてのキャリアを考えて、今はまだできないと答えていた。
とは言え、毎日禅のマンションに帰って来るのだから、あまり意味はないかもしれない。
それでもやはり自分の住まいは、まだ別にしておこうと莉帆は考えていた。
軽くおつまみを食べてから、ソファで禅と一緒にコーヒーを味わう。
そこで莉帆はふとさっきから引っかかっていたことを思い出した。
「ねえ、禅。テレビ放送見た?」
「ん?見てない」
はあー?!と莉帆は大声を上げる。
「うるせっ。声デカすぎだろ」
「だ、だって、見てないってまさか…。ホントに?」
「ああ。だってもう終わったことだろ?結果も分かってるのに。なんで見るんだ?」
「いやいやいや、なんで見ないのよ?普通見るでしょ?」
「そうか?まあ俺、子どもの頃から運動会のビデオとか見ないやつだったしな。過去にこだわらない男の美学だ」
「なにかっこつけてんのよ。そういう問題じゃない!」
ムキになると「莉帆こそなんでそんなに怒ってるんだ?」と逆に不思議がられた。
「もういい!禅に普通の感覚を求めた私が悪かったの」
「ん?まるで俺が普通じゃないみたいな言い方だな」
「ええ?!まるで自分は普通ですみたいな言い方しないで」
ムーッ!となる莉帆の肩を、禅がいきなり抱き寄せる。
「そう怒るなって。可愛い顔が台無しだぞ?」
耳元でささやかれ、途端に莉帆はシュルシュルと小さくなった。
「ほら、やっぱり可愛い」
そう言って、禅は莉帆の頬にチュッとキスをする。
「あの、禅?」
「ん?なに」
「えっと、ありがとう」
「なにが?」
「ショーが終わった日の、テレビのインタビュー。嬉しかった」
「どういたしまして。…って言いたいけど、なんのことか分からん」
はいー?とまたしても莉帆は真顔に戻る。
「ちょっと、私の感動を返してよ!」
「仕方ないだろ?テレビなんて、放送されるのはほんの一部分だけなんだから。どのシーンが使われたのなんか知らん」
「それは禅が見てないからじゃない。どうして見ないのよー!」
「だから、過去にこだわらない男の…」
「もういいもん!」
プイッとそっぽを向いてソファの端ににじり寄る莉帆を、禅は後ろから抱きすくめた。
「嘘。分かってる。だって俺、めっちゃ気持ち込めて言ったから。誰よりも一番近くで支えてくれたマネージャーを、心から愛してるって」
莉帆は胸をドキッとさせて禅を振り返る。
「禅…」
「莉帆、ありがとう。愛してるよ」
「私も。ありがとう、禅。大好きよ」
見つめ合うと、どちらからともなく顔を寄せてキスをする。
そっと唇が離れると、おでこをコツンと合わせた。
互いの吐息がすぐ近くに感じられて胸が高鳴る。
だが莉帆は、ん?と首をひねった。
「ねえ、テレビで愛してるなんて言ってないでしょ?」
「そりゃな。一応放送禁止用語は心得てる。でも心の中ではそう思ってた」
「ぶっ!放送禁止用語じゃないから」
「じゃあ、言っても良かった?莉帆ー!愛してる!って」
「だめ!やっぱり放送禁止用語!」
「だろ?まあ、今はまだな。そのうち叫ぶ」
「だめだったら!」
またしても言い合い、笑い合って、愛をささやき合う。
2人で過ごす時間は、何よりもかけがえのない、楽しくて幸せな時間だった。