まがりかどは、秋の色

3

同じ大学と聞けば、思わず探してしまうのもおかしくないはず。じゃあこのあたりにいるかも、と意識して探すと、ときどき大学近辺で姿を見かけるようになった。


好きな場所の好きな店員さん……職員さん? お兄さん? が、私服で身近にいるなんて、なんだか不思議な気分だ。

舞台裏を見たような、秘密を覗いたような気持ち。


学食で見かけた本多さんが、珍しく一人だった。


ご友人との待ち合わせかもしれないし、お邪魔にならないように少し待って、誰も近くにいかないのを確認してから声を掛ける。


「すみません、お隣いいですか」


意を決して音をのせた声は、なんとか掠れなかった。


「はい、どうぞ。……あれ、石井さん?」


こちらを見ずに返事をした本多さんが、振り向いて少し横にずれようとして、ようやくわたしを視界に捉えた。


「こ、こんにちは」

「こんにちは。同じ大学だったんですか?」

「そうなんです。あの、お隣大丈夫ですか」


知り合いは嫌かもしれないと思っての念押しの確認に、「どうぞどうぞ!」と椅子を引いてくれてしまい、慌てる。


「すみません、ありがとうございます」

「いえいえ。お盆を持ったままだと座りにくいですよね」
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