まがりかどは、秋の色
ドラマ化もされた女用心棒が活躍するシリーズのポストカードがあったり、全部で十一個、猫のぬいぐるみがあったり。

本多さんの家は、至るところが本好きと分かるものたちであふれていて、穏やかで賑やかだった。


飾ってあるということは、見てもいいということ。宝の山……!

わくわくするおうちだ。


わああ、ときょろきょろしながら、地下室まで案内してもらう。本も資料もたくさんある、宝箱みたいな部屋。


「お邪魔します!」

「はーい、どうぞ。児童書はこっちです」


窓のない書庫にはずらりと本棚が並び、ちゃんと分類ごとに小さく掲示が出ていて、私設図書館めいている。


いいなあ。日焼けしにくいうえに、収容数が多い車庫、最高だなあ。


「図書館で借りたんですよね、取り寄せはしましたか?」

「いえ、ブラウジング中に見つけたので、希少本ではないと思います」


確認のための一問一答が始まった。


「短編ですか、長編ですか」

「短編です。外国の教訓? 昔話? が集められたシリーズで、絵はあまり描かれていなくて……」

「どういうお話なんですか?」

「ちゃんと覚えてなくて。だから読み返したいなーと」


本多さんは、普段、文庫で子どもたちの要望に答えている。そのせいか、手慣れた言葉選びで端的な質問が続く。


仕事めいた雰囲気に、お休みのときまで付き合って探してもらって、なんだか申し訳なくなってきた。

なるべく早く見つかるよう、できるだけ明瞭に、てきぱき答える。


「なるほど。何が出てきたかは思い出せますか」

「キャベツだかレタスだかチーズだかを積んで、船に乗って航海するんです。猫とねずみが出てきたような気がします」

「海が出てくる外国の昔話なら、まずは海が身近な国から探しましょうか。昔話とか説話とかはこのあたりですね」

「はい!」


本の最初の方のページに載っていたことも確実だと伝え、とにかくざっと内容を確認するのを繰り返した。ひたすら読み込む。


片端からページをめくる音だけが響いた。
< 22 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop