まがりかどは、秋の色
説話や昔話である、という記憶の分類が間違っていなければ、これで最後。


ページをざざっと流し読み、近しい話がないことを確認して、手に取っていた本を本棚に戻す。


「見終わった〜!」

「終わりましたね」


棚をすっかり見終わった頃には、本棚の脇に、候補が数冊積み上がっていた。すごい。


今までの探し方では、候補すら見つからなかった。蔵書の偏りもあるかもしれないけれど。


「一旦上に上がりましょう。お茶でも淹れるので、ゆっくり確認してください」

「ありがとうございます!」

「いえいえ。この中にあるといいですね」

「ほんとに」


地下を出て、ふかふかの椅子に座り、淹れてもらったお茶を片手に読みふける。


わたしが候補の本を読む間、本多さんは自分の趣味の本を読んでいて、ページをめくる音と、心音だけが響いている。


探しものをする許可を得てお邪魔しているわけだけれど、今、本多さんの家にはわたしたちの他に誰もいない。ご家族はお仕事中。


本多さんはもう大学生だから、わたしはよく来るお客さんだからという理由で、あまり警戒心なく書庫の利用を許された。


もちろんありがたい。探している本が見つかるかもしれないのだし。


でも、なんというか、その。ありがたいやら、どう思えばいいのやら。


悶々としつつ、ひたすら手を動かして。そして。
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