まがりかどは、秋の色
「本多さん、ありました!」


バッ、と上げたこちらの顔に、本多さんもバッと顔を上げた。


「ありました!? おめでとうございます」

「ありがとうございます、やったー!」

「どれでした?」

「これですこれです」

「これかー! 俺も後で読みたいんで、写真撮っていいですか」


タイトルが見やすいように、両手でしっかり押さえた表紙を、本多さんがすばやく写真で撮った。

スマホのカバーは黒なんだなと、あんまり関係のないことを思う。


「じゃあ、石井さんの文庫のカードに、後で記入しておきますね」

「ありがとうございます」


そっか、写真に撮ったのは、誰に何をいつ貸したかが分かるようにするっていう意味もあるのかも。


「他のは俺が後で戻しておくので、置いていっていいですよ」

「いえ、探していただいて、そこまでお願いするわけには。戻しに行きます」

「いや、文庫から持ってきたままの、片づけないといけない本もあるので。後でまとめて片づけるから大丈夫ですよ」


それに。


「せっかく見つけたお話、早く読みたいでしょ」
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