まがりかどは、秋の色

6

「このシリーズ、もうすぐ映画やるよね」


文庫のお手伝いの最中、隣の本棚を整理していた尚が、膝あたりの高さに並んだ背表紙を指差した。


作り込まれた世界観が魅力の、名作ファンタジーシリーズ。


「えっそうなの? これって結構前に映画化されてなかった? 新しく作るってこと?」

「いや、前の三部作のまま。一挙上映で、通しで三つとも再上映するらしい」

「ええー! 時間大変そうだけど見たい! 尚、もう見たことある?」

「スマホで配信を見たことならある」

「わたしもスマホのちっちゃい画面で見たの。せっかくだから、大きい画面で一緒に見ない?」

「見よう見よう」


日時はあれよあれよと決まり、会員だからと尚がチケットを二人分取ってくれ、現地集合で長時間映画を楽しんだ。


映画の帰り、カフェでお茶をしつつ、感想を話す。


ひとしきり盛り上がり、注文したものがあらかた片づいたところで、ケーキの最後の一欠片を口に運んだ。


「今日はありがとう! 楽しかった」

「あの、さあ」

「うん?」


これで終わりと分かりやすいはずの、わたしの解散の合図を、尚はゆっくり遮った。
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