まがりかどは、秋の色
最大限明るくしてから見せられたスマホの画面には、展覧会のホームページが映っている。

水彩で有名な絵本作家の、没後五十年を記念した展覧会。記念館が主催するらしい。


巡回展だと、「東京会場」「大阪会場」みたいに、会場を変えながら、期間ごとに作品が全国を回ることがある。


記念館があるような有名な作家さんだと、そういうこともあるのかも。

こっちでも展覧会があるから、作品が来たら一緒に行こうということかな……?


「もも、この作家さん好きだったでしょ」

「うん。こっちに来るの?」


確認に、首を振られた。方向は横。


「いや、記念館だけでやるらしいから、こっちには来ない」


でも、一緒に行きたいなと思って。


「……うん」


ふっと尚が視線を逸らした。


赤い顔。ごとりと置かれたスマホ。黒いスマホカバー。震える指。結ばれた唇。


短い呼吸音。


もも、とこちらを呼んだ尚と、真っ直ぐに目が合った。


「……よかったら、俺と一緒に行きませんか」
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