可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。


「おいしい?」



その質問にごくりとケーキを飲み込む。



「はい」



言いながら初めて異性から向けられたあーんに恥ずかしくなる。

ところで



「いいんですか,こんなところでケーキなんて食べて」



話題を変えるように問いかけた。

先輩はけろりと答える。



「うん。バレたらきみのせいにするから。ほら,あとは自分で食べて」



なっ,と,私はかちゃっとした音をたてた。



「私の,って。このケーキは先輩が」

「僕はまだ食べてないもーん」


いつの間にか跡形もないお皿。

そしてその上には新しいケーキが置かれている。

この人,いじわるな上に小賢しい……!!!!

いたずらに向けられた顔に,悔しくなりながら自分のケーキへフォークを加える。

そしてそのままでは何だか癪で,拗ねているのを隠しもしない口調でぽつりと呟いてみた。



「お詫び」



その言葉が思いの外聞いたようで,面白いくらい先輩の肩がびくりとする。

もちろん,私だって悪かったけど。

最初にそう言ってケーキをくれたのは先輩の方だ。



「って言ったのに」




後に言葉を加えて先輩をちらりと見る。

言い過ぎじゃないよね……?

これくらい,許してくれるでしょ?
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