可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
そうして私の瞳に映った先輩は何が面白いのかきょとんとして,途端に吹き出した。
「僕にそんな風にいうの,きみだけだよ」
それは流石に大袈裟だと思う。
「あはははは……っ」
理解しがたいと言う正直な私の顔をみて,先輩は本当に面白そうに笑う。
流石に少し恥ずかしくなって,そんなことすらどこか納得いかなくて,私はむっと唇をつき出した。
「光,これどーすんだ」
突然開いた扉。
突然聞こえた,知らない男の人の低く落ち着いた声。
だ,誰?
そんな突然の連続に,背筋ごとぴんと跳ねる。
振り返った先には背の高い黒髪の男子生徒が立っている。
紙袋の音ががさりとする。
その音に反応して,先輩が不満そうな声をあげた。
「ちょっと,もっと大事そうに扱ってよ,秋」
親しげに呼ばれた名前。
「じゃあ自分で持ってこい。お前の家からわざわざ持ってきたこと忘れるなよ」
気の知れた仲なのだろうと,私は借りてきた猫のように息を止める。
「はいはーい」
紙袋を受け取り,中身の物色を始める先輩。