可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。

そうして私の瞳に映った先輩は何が面白いのかきょとんとして,途端に吹き出した。



「僕にそんな風にいうの,きみだけだよ」



それは流石に大袈裟だと思う。



「あはははは……っ」



理解しがたいと言う正直な私の顔をみて,先輩は本当に面白そうに笑う。

流石に少し恥ずかしくなって,そんなことすらどこか納得いかなくて,私はむっと唇をつき出した。



「光,これどーすんだ」



突然開いた扉。

突然聞こえた,知らない男の人の低く落ち着いた声。

だ,誰?

そんな突然の連続に,背筋ごとぴんと跳ねる。

振り返った先には背の高い黒髪の男子生徒が立っている。

紙袋の音ががさりとする。

その音に反応して,先輩が不満そうな声をあげた。



「ちょっと,もっと大事そうに扱ってよ,秋」



親しげに呼ばれた名前。



「じゃあ自分で持ってこい。お前の家からわざわざ持ってきたこと忘れるなよ」



気の知れた仲なのだろうと,私は借りてきた猫のように息を止める。



「はいはーい」



紙袋を受け取り,中身の物色を始める先輩。

< 14 / 68 >

この作品をシェア

pagetop