可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
こてんと,先輩は首をかしげる。
その無防備な様子を見て,ほっとした勢いで言ってみる。
「この子を頂く代わりに,先輩のぬいぐるみの洋服も作ってみていいですか」
「え……」
驚かせたかな,と思いながらもせっかくの勇気を振り絞った。
「いえ,あの,先輩ほど上手でもないんですけど,裁縫は元々,ちょっと,好きで」
「いいの?」
先輩が目の前にしゃがむ。
前向きな返答に,私は驚きながらも上目で頷いた。
「先輩が,良ければ」
つっかえながらも,更に頷く。
「……秋」
冷静な先輩の呼び掛けに,さっと動く。
紙袋を光に寄せた。
「みて」
そのまま向けられた袋にぱちくりとする。
「これも,これも,これも」
順に出てくる1度見たぬいぐるみ。
その一体を抱いて,先輩が私に近寄る。
「どれも色や生地は違うのに,似たり寄ったり。僕ね,今唯一の趣味なのにスランプなの。たまには誰かのアイデアも見てみたい」
そして,続いた言葉に
「だから,きみが本当にいいなら,お願いしたい。いい?」