可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。


私はふっと力を抜いた。



「ふふ……うん。いいですよ」

「ため口……僕,先輩なんだけど? なまいき」



にゅっと伸びた細い腕に,むにっとほっぺをつままれる。

突然触れた人間の体温に私かっと赤くなった。



「どうしたの?」

「~っやめてください!」



にっとからかわれ,私は全部わざとなのだと分かって声をあげた。

からからと笑う先輩の顔をみて,口にする。


「先輩」



言葉がつまって,顔を伏せた。



「さっきも言ったんですけど,私,この学校にまだ,友達がいないんです」

「うん」



相づちをかかさずずっと聞いてくれる光に気付き,またほっとする。



「先輩,もし私が先輩の言う"可愛い"洋服を作れたら,私と,その。友達に,なってくれませんか。秋先輩,も良ければ」



私はずっとそばで私達を見ていた秋を見上げた。
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