可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。



昨日よりも清々しい朝,がちゃりと家を出る。

すると隣の隣からも人が。

その姿を見て,あ,とお互い顔を見合わせた。



「翠ちゃん」



驚いたように表情を崩す先輩。

それは私としても同じ気持ちで,けれど朝から会えた喜びの方が強くて笑顔になる。

家,こんなに近かったんだ。

引っ越しの挨拶は,私が学校に言っている間に両親が行ったらしく,私は地域の人の顔を知らなかった。



「おはようございます! はも先輩!!」



私は声をかけて駆け寄る。



「はも? 違うよ翠ちゃん。僕ははもじゃなくて,はも"ん"」

「分かってますよ。ほら,早く行きましょう!!」



昨日までと同じ場所とは思えないくらい,心が弾む。

だ,け,ど。




「で,どうして2人揃ってずぶ濡れなんだ」




学校について早々,秋先輩の言葉に肩を落とす私達。

私に至っては秋の言葉に目を逸らした。



「仕方ないだろ,秋。雨が降るなんて思わなかったんだから」

「ばっちり予報されてただろ。南まで……案外抜けてるんだな」

「う」



違うもん,いつもなら,と今日はたまたま持っていなかった折り畳みを思い出して悔しがる。

そう,はも先輩と歩き始めて直ぐ,雨に振られてしまったのだ。

その上予報もされていたことで,秋先輩に呆れられてしまった。

私達にしてみれば道中コンビニもないなかでの突然の出来事で,家がもう少し遠かったらとぞっとする。


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