可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「ほら」
お説教の気がすんだのか,秋先輩にばさりと頭へ被せられた。
なに? と上を見ると,真っ白でふわふわのタオル。
「安心しろ,ちゃんと洗ってある。光といるとしょっちゅうだからな」
秋先輩の,細く綺麗な指先が耳に触れる。
思わず驚いたけれど,そんなことを本人にいえるはずもなく。
私は赤面したまま秋先輩の手が触れたところを押さえる。
「ねー僕のはー?」
横に並ぶ面白くなさそうな声。
そういえば,と自分に一瞬被せられたことを気にしながら,私はそれを差し出そうとした。
「あ,じゃあこれ」
そんな私を秋先輩が遮る。
「光はもうちょっと我慢しろ。今クラスのやつに頼んだから」
「ふーん」
はも先輩が私の後頭部へと手を伸ばす。
そして,わしゃわしゃと数回片手で撫でるように私の髪をタオルで拭いた。
?!?
先程とは比にならない驚きで,反射的に頭を押さえる。
言葉にならず見つめると,目の前には満足そうな顔。
えっえ,はも先輩。