可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。

はも先輩と"可愛いもの"


結局,私は1日ジャージでの生活をすることになった。

天気はとっくに快晴で,なのに,お昼になっても気分は晴れない。

お昼を広げながらまだ沈んでいると,今度は廊下から声がする。



「翠ちゃーーんっ。お昼食べよ~ー?」



はも先輩の元気な声。

ぱっと顔をあげる。

泣きつきたくなる気持ちを押さえて,丁度開け始めていたお弁当を,パカリと再度閉めた。

急いで駆け寄るも,もちろんそんなことしなくても先輩達は逃げたりしない。



「はも先輩!!! それに,秋先輩も!」



横を見ると,にゅっと出てくる秋先輩。



「どうしたんですか? 急に……」

「どうせボッチ飯だろうって,秋が」




はも先輩がぴっと秋先輩の方へ指を指す。

ボッチ飯なんてひどい,とぱちり瞬くと,秋先輩は示されてびくりと肩を震わせる。

驚いてる……

きっと秋先輩じゃなくて,はも先輩が言ったんだろうな。

それで,わざわざ迎えに来てくれたんだ。



「どこで」

「ケーキ」



食べようか,といいかけて。

なるほどと思い浮かぶ場所。



「! ふふ。はい。行きたいです。ちょっと待ってください」

< 25 / 68 >

この作品をシェア

pagetop