可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「はいっ。いらっしゃい,翠ちゃん」
両手を広げ,先頭を歩いていたはも先輩が振り返る。
「すっかり自分の部屋だな」
「そうですね」
穏やかに言う秋先輩へ共感するようにくすくす返しながら,私はやっぱり見た目より話しやすい人だと思った。
お昼を広げ,ふぅーーと落ち着く。
お茶を飲み込むと,今度ははも先輩に話しかけられた。
「ねぇ,翠ちゃん今日さ,キーホルダー」
ぴんっと反応して,私ははも先輩を見る。
「あっはい! 透明のぬいほるに入れてました! ……でも,なんだか閉じ込めるみたいな気分になっちゃったので,今度からは雨が降ったときだけにしようと思ってます」
「そっかそっかー」
雨で話せなかったことがあったのはお互い様だったみたい。
そんな事で,嬉しくなる。
「先輩も。カバンとっても可愛かったです」
「そうでしょーー?!」
楽しげに揺れてたぬいぐるみキーホルダーの数々,ケーキ屋やリボンの縫われたカバン。
雨が降りだした途端私より先に,カバンをカバンで包み始めたときにはらしくて笑ってしまった。
「僕は別に,隠してるわけじゃないからね。身の回りのもの,全部可愛いものにしてるんだー」
「いいですね。先輩のぬいぐるみに合うサイズの洋服,明日には出来そうなので,もうちょっと待ってくださいね」
「え,もう?!?」
驚く先輩。
だけど,私にとっては当たり前の事。
久しぶりの裁縫だけど,すごくすごく力をいれて頑張ってるんだ。