可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。

早く会いたくて,早く見せたくて。

喜んで欲しくて,褒めて欲しくて。

今日は呼ばれてないけど。

いるかも分からないけど。

いつでも来ていいって言ってたから,いいよね……?

と,出来上がった洋服を持って急いで第3校舎のあの部屋へと向かう。

目的地の前で,気に入って貰える代物かどうかもう一度チェックするために私は目の前でそれを広げた。

大丈夫と急に緊張しながらも,実はちょっぴり自信もある。

眺めながら,もう一度早足になって私は駆け出そうとまでした。



「ちょっと」



鋭く小さな声に振り返る。

あっと思い出すのは,彼女からの言葉やはも先輩との光景。

昨日の……



「えっと……なにか」 


先輩がこんなところで私に声をかける理由なんてない,はず。

そう思いながらも,なんとなくはも先輩に関係するのだろうと直感した。

先輩との関わりは,昨日の朝の一方的なものだけ。

1度吐かれた鋭い言葉に,ちょっぴり身を固くしてしまう。

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