可愛いものが好きな先輩は,ちっとも可愛くない。
「そっんなつもりじゃ……」
「あなたみたいなのが相手されるわけない。あなたみたいなのなんて許されない。どうせそのうち飽きられるんだから,あなたからさっさと離れてよね」
つらつらと吐かれる私を否定する言葉。
それで済んだのか,先輩はふんっと私を睨んで帰っていく。
はも先輩に会いに来たんじゃないの……?
もしかしてそれを言うためだけに,私を待ってた……???
嵐が目の前で過ぎ去ったような感情で,他になにも考えられずに呆然としてしまう。
立ちすくむ私の首に,誰かの腕が回った。
触れるか触れないかでそっと後ろから包まれ,私は驚く。
そして香りに上を向けば,無表情のはも先輩もまた,私を覗き込んでいた。
はも先輩は,猫背や動きから小さく見えていても,案外大きく骨張ってもいる。
そんな感触に,私は戸惑いながらも声をかけた。
「あの。はも先輩?」
「どうして,言い返さないの?」
どうしてって
「あっ」
さっきの,会話がはも先輩にも聞こえてたんだ。
「その,隙がなくて」
相手が本気だったこと。
そして全部が全部間違ったことをいわれたとも思えないこと。
自信なく話しながら,私は普段より静かなテンションのはも先輩の様子を窺った。